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2025.3.14

吉野山と筆作家

奈良県の吉野山は、古くから桜の名所として知られ、日本の美意識や文化に深く根ざした場所です。春になると山全体が淡いピンク色に染まり、多くの人々が訪れますが、その静寂の中には長い歴史と職人の技が息づいています。

 

私にとっても、吉野山は特別な意味を持つ場所です。筆の歴史を紐解くと、日本では奈良時代から筆作りが盛んに行われ、特に吉野の地はその素材となる良質な木材を生み出してきました。吉野杉や吉野檜は建築材としても名高いですが、筆軸としても優れた特性を持ち、長年にわたって筆職人に愛されてきました。

 

また、筆作りに欠かせないのが穂先となる毛の選定です。日本の伝統的な筆には、羊毛や馬毛、鹿毛などが用いられますが、近年では古くから受け継がれてきた素材の確保が難しくなっています。そんな中、40年以上前の希少な羊毛を活かして筆を作っているのが仲谷省三です。私は、失われつつある伝統の技術を守りながら、新たな表現を模索し続けています。

 

吉野山の静けさの中で、一本一本の筆を仕上げていく姿は、まるで自然と対話するような神聖な営みです。桜の花が咲き誇る一方で、その花を描く筆が生まれる背景には、素材を選び、形を整え、最適な書き心地を追求する地道な作業があります。その過程こそが、私にとっての吉野山の美しさを映し出しているのかもしれません。

 

伝統と革新が交わる吉野山で、これからも新たな筆の可能性を追い求め続けます。

 

 

奈良筆の通販・三省堂筆店 

筆作家・仲谷省三

電話:0746-32-3058

営業時間:8時~21時(不定休)