2025.3.21
奈良筆作家・仲谷省三 〜伝統と革新の筆跡〜

私は、筆作りに人生を捧げてきた。奈良筆は1300年の歴史を誇る伝統工芸だが、私はその伝統を受け継ぎながらも、独自の感性で革新を続けてきた。筆とともに歩んできた私の半生を、ここに記したい。
筆との出会い
私は奈良の筆職人の家に生まれたわけではなかった。幼少期は筆づくりとは無縁の生活を送っていたが、ある日、偶然目にした一本の筆が私の運命を変えた。職人の手で丁寧に作られたその筆を握った瞬間、不思議な魅力に引き込まれた。筆作りの修行に入ると、奈良筆の伝統技法を徹底的に学んだ。素材の選定、毛の調整、芯立ての繊細な作業・・・。すべてが職人技の結晶であり、簡単に身につくものではなかった。しかし、私は愚直なまでに技を磨き続け、次第に「仲谷の筆」として名が知られるようになった。
伝統と革新の融合
私の筆は、伝統に忠実でありながらも、時代の変化を反映した独創的なものが多い。従来の筆は和紙や墨に特化して作られるが、私は新しい書の表現を求める書家たちの声に耳を傾け、現代的な素材との相性も考慮した筆を生み出してきた。例えば、従来の筆よりもコシの強い毛を採用し、より繊細な表現が可能な筆を開発した。また、日本の伝統工芸の枠にとどまらず、筆の新たな可能性を模索し続けている。
職人として、そして伝承者として
私は単なる筆職人ではなく、次世代への技術継承にも力を入れている。日本各地でワークショップを開き、若い世代に筆づくりの魅力を伝えてきた。また、奈良筆の技術が衰退しないよう、新たな職人を育てる時期もあった。
「筆は単なる道具ではない。その人の想いを映し出す存在だ」
そう信じているからこそ、私の筆には使い手への深い想いを込めている。私の筆を手に取った人々が、単なる書の道具を超えた、魂のこもった一筆を感じてくれたら、これ以上の喜びはない。
これからの筆跡
70歳を迎えてもなお、私の探求心は衰えない。私は今日も新たな筆の可能性を追い求め、工房に立ち続けている。奈良筆の伝統を守りながらも、時代の風を受けて進化を続ける私の筆が、これからも多くの人の心を打つことを願っている。筆とともに生きる私、仲谷省三。その筆跡は、時を超えてなお輝きを放ち続ける。
奈良筆の通販・三省堂筆店
筆作家・仲谷省三
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